秀は一気に冷や汗を流した。
身体が震える。

どうして。
何故彼女は'あの時'の事をまるで見ていたかのように語るのか。


「なんで‥ッ」


「お前も夢との狭間で曖昧にしか覚えていないんだろう。だが'彼女'は生きてる。ただし記憶はないがな。」

「一体なんなんだよ!!」

あれは夢だ。
過去なんかじゃない!

秀は蘇る記憶に必死に言い聞かせた。

女子生徒は秀の様子を伺うと,椅子から立ち上がり秀の額に手を当てた。


「‥大丈夫か?」

「はぁ‥はぁ‥。」

ようやく目の前の女子生徒を確認する事が出来た。
彼女は真直ぐに秀を見ていた。

「逢から話は聞いていた。私は「名津川 涼(ナツカワリョウ)」お前と同じ部の人間だ。」

「じゃ‥じゃあF部の?」

「初対面からすまなかったな。私は人の過去や闇が見える。信じて貰わなくても構わない。」

涼はゆっくりと秀の額から手を放した。

「F部にいる者は皆,闇を持つ者ばかり。だがお前の闇はいずれ晴れる。この学院に来た事によって。」

「‥‥?」

秀は頭が混乱しており,彼女が何を言ってるのか理解出来なかった。

涼は机から本を取ると出口のドアへ向かった。

「ただ言っておきたい。記憶の中の少女とはいずれ再会する事になる。だから‥悪夢などでは決してない。」

涼はそういうと部屋を出て行った。