二人が辺りを見回していると,上から声が聞こえた。
「よー,お二人さん。登って来いよ。」
入口のすぐ上から顔を覗かせたのは晴也だった。秀達は入口横の梯子を登る。
登った先には人が十分座れるほどの広いスペースが広がっていた。
「こっちこっち。」
晴也が手招きをし,座るよう促した。
「秀君とは初めての一緒の休みですね。」
腰を下ろした秀の向かいに座っていた優貴が口を開いた。
秀を中心に円状に座っているのは,晴也,京治,夕,優貴,壱紀とそして奈央だった。
「どうだ,森月君,部には慣れたか?」
奈央が話しかけた。
今日は眼鏡をしていなかったため,秀は一瞬誰だか分からなかった。
「秀で良いッスよ。まぁ‥慣れたかな。まだ会ってない奴等もいますけど。」
「そうか。三年に関してはそのうち紹介するよ。」
「はい。」
「おい,武司と誠はどうした?」
晴也が京治と夕に問う。
「いや,誘うつもりだったんだけどさ。」
「なんか課題みたいなの二人してやってて,声かけづらかったんだよね-。ほらあの二人なんだかんだで勉強派じゃーん?」
「武司君は英語,誠君は理数系を専門でやってるんでしたね。」
「すごいよな-。二人とも。」
壱紀がパンを頬張りながらしゃべった。
「奈央先輩,F部って全部で何人いるんですか?」
「そうだな。大体15人くらいか。壱紀,2年には全員紹介したのか?」
「いや!後,名津川姉弟だけです!」
「そうか。」
─それからたわいもない話が続き,気がつけば時計の針は予鈴の時刻を刺していた。
♪♪♪♪♪~
「あ,予鈴ですね」
「もうこんな時間か。」
奈央と優貴は立ち上がると制服のほこりを払う。
「何,もう行くの?」
「まだ予鈴だろ?」
京治や晴也達には予鈴など意味のないものらしい。
