──‥ゅう‥しゅう?秀ってば!!


「!!!」

目覚めた先は車の中だった。


「大丈夫?うなされてたけど‥。」

「‥あ,ああ。大丈夫。」


‥‥夢。

あの頃の輝くような思い出は,今はもう悪夢のようなになっていた。

涙を拭うと現実をようやく見る事が出来た。
俺は今,新たな学校に向かっていたところだ。


俺の名前は『森月 秀(モリツキシュウ)』。
父親はいわゆる転勤族で,今回もそのせいで慣れ親しんだ土地を離れ,この街にやってきた。
高校2年になったばかりの転校。
普通なら今頃,新たなクラス替えで騒いでいるところだ。
でも今は違う。
友人達とろくな別れも出来ないまま,今は見知らぬ街の景色を見ながら,脱力していた。

「引っ越しの片付けで疲れてるんじゃない?」

隣で先程から声をかけてるのは姉の『郷子(キョウコ)』。
俺より四つ年上で,今は美容師をしている。これでも昔はそうとうな不良だった姉弟の中の問題児だ。
最近は歳を取ったせいかようやく落ち着いてきたと親は言っている。
今日は転校初日の保護者役で,姉の車で学校に向かっている途中だ。

「‥はぁ,ダルいな」

俺は夢と現実の狭間を経験してすっかり疲れていた。

「せっかくの新しい学校なのに,もっとしっかりしなよ-。」

「ねーちゃんが隣にいる時点でやる気なくすんだよ。」

「何ソレ!しょうがないでしょ?あたしだって来たくて来たんじゃないんだからね。母さんの都合が悪くなったから仕方なく来てやったの。」