佐田組はなかなか借金を返せないお父さんを家に来て連れていった。
お母さんも暴力を受け、なんとか家に残れた。

お母さんは震える口でそう言葉を発した。
そして私に近づくとお母さんは握っていた封筒を私に握らせた。
「きっと、お父さんは殺されたわ。私も殺される。希だけは生きていてちょうだい。これは、しばらくは暮らせる分のお金よ。遠くに逃げなさい。この家には戻っちゃいけないわ」
私の背を押しながらお母さんは言った。
私は頷くと、カバンと貰った封筒を持って今までずっといた家を去った。
遠いところへ行けと言われたけど、行く宛がない。
お金もいつかはなくなるから働かなくちゃいけない。

私の足は電車に乗っていた。
そして来たところは繁華街。
この繁華街は「桐生組」が収めている。
桐生組と佐田組は犬猿の仲で、お互いの土地には入らないという約束があると聞いたから。