――彼との通話を切って数分後、1台の車が自分の前に停まった。
「――...あ、」
「..お待たせ。迎えに来たぞ!」
車から降りてきた月丘くんは、ベンチにおいていた買い物袋を軽々と持ち上げてにこにこ笑った。
その姿は、あの時の彼と重なって見えた。
「つ..よ、陽平..ありがとう」
「これくらい当たり前だろ?お前はもっと俺を頼れ」
月丘くんはぐいと私の手を荷物を持ってない方の手で握りしめた。
変わってないと安心したと同時に握られた手に熱を感じ、胸が高鳴った。
「んー?菜穂お前顔真っ赤だな!照れてんの?」
可愛いなとにやにや笑う月丘くんに私は彼への"好き"という気持ちが溢れ出てくるのを感じた。
「...好き、だなあ」
―――ふと放った言葉。
自分がとんでもないことを言ってしまったことに気付いて、ばっと口元を覆い隠した。
「......」
ぽかんとこちらを見る月丘くんに、自分の顔が真っ赤になっていくのを感じる。
「...あ、あーー!!あー!!なん、なんでもな...」
否定の言葉は最後まで紡ぐことができず、自分の手のかわりになにか柔らかいもので唇を塞がれた。
「..うん、俺も好きだぞ!」
彼は少しだけ顔を赤くして、ニコリと笑った。

