走って来た子を捕まえて抱っこした。
結城先生は呆れた顔でこちらを見ていた。


その子の腕につけてるリストバンドには
『西村 蒼』と書かれていた。


蒼君か。



「こら、蒼君?
小児病棟抜け出したら駄目でしょ?」

「うぅっ、だって今日お注射あるんだもん」



注射が嫌なんだ。
あたしも嫌だった思い出がある。



「…ハァハァ、志帆ちゃんごめんね。」



小児科看護師の田林さんが息を切らしながら走って来た。