夜にはMAKIDAIの両親達は、宿泊先のホテルへ移動し、翌日には一旦東京に帰ることになっていた。

静かな病室で、MAKIDAIは痛む胸を押さえながら、携帯に手をのばしメールをする。

…今、何してる?…

MAKIDAIから楓へ。

…部屋で休んでます…

…今、俺一人だけど会えるかな?…

…はい。今から、行きます…

荷物の中の紙袋を手にして部屋を出る。

面会時間過ぎた病棟は静かで楓はこそこそとMAKIDAIの部屋へと向かう。

「楓さん、呼び出してごめん」

「ううん、私も眠れなくて、丁度良かったです」

そう言って、ベットの脇の椅子に腰掛ける。

MAKIDAIがふと気づいた。

「何を持ってるの?」

楓が隠しながら持って来た紙袋が気になった。

「うん、実は…」

楓は少しためらいながら、袋を差し出した。

「俺に?」

「うん。こんな状況で渡すのは気がひけるけど、クリスマスプレゼントです」

MAKIDAIは、予想外のプレゼントに驚く一方で、また申し訳無い気持ちになってしまう。

「俺の為に?」

「そうですよ。でも、色々まよったのにこんな物しか思いつかないくて」

MAKIDAIに代わって楓がプレゼントを開ける。

「あ、ネクタイとハンカチ」

「うん、朝の番組の時にどうかな、なんて」

「いや、嬉しいな。しばらく出れないけど、早くこれ着けて出れるようにがんばるよ」

「本当に?嬉しいです」

喜ぶ楓と複雑な面持ちのMAKIDAI。

「でも、せっかくのクリスマスが台無しになっちゃったね」

楓も少し沈んだような表情になったが、プラスに考え、

「んー、でもMAKIDAIさんとゆっくり話が出来る時間ができて嬉しいですよ」

「確かに、最近こんなのんびり過ごすこと無かったなぁ」

楓に言われてしみじみと感じる。

「MAKIDAIさん、パフォーマーじゃなくなってからもずっと走り続けてるような気がします」

「いや、俺達が始めたことだし、周りが色々してくれてるのに自分だけのんびりしてたら申し訳ないしね。やりたいこともまだまだあるし」

グループの為、後輩の為とひたすら先頭を切って走り続けているMAKIDAI。

そして、自分のことよりもまず仲間やスタッフ達のことを第一に考えている。

「MAKIDAIさんは、いつも自分のことよりもまず誰かの為にって動いてるでしょ」

「そうかなぁ。でも、楓さんだって、事故の時、自分のことそっちのけで俺の心配してくれてたでしょ」

「だって、あの時は本当に心配で夢中だったし、…MAKIDAIさんは…大事な人だから」

お互いに自分のことは後回しで人の心配ばかりしている性分だが、楓にとってMAKIDAIはかけがえのない存在で、他の誰よりも何倍も心配だ。

「大事?」

楓の言葉にMAKIDAIが反応する。

「あ、沢山のファンがMAKIDAIさんの元気な姿を待ってますからね」

楓は、慌てたように付け加える。

MAKIDAIが

「楓さん、ちょっと手伝って」

と言って、起き上がろうとする。

「え、まだ、起きるのはっ」

「だい、じょう、ぶ」

MAKIDAIは苦しそうだが、力を振り絞って起き上がろうとする。

「肩貸してくれる?」

MAKIDAIが楓の腕を掴む。

「うんっ」

楓は、心配そうにしながら肩を貸す。

「ううっ」

MAKIDAIは、胸を押さえ、息を吸うのも苦しそうだが必死で起き上がった。