今日は、東京で料理教室の日。

楓は料理教室を終えて、お弁当を詰めている。

「MAKIさんのお弁当、こんな感じかな〜。よしっ、出来た。後は、片付け、片付け」

いつも通り、片付けを済ませ時計を見るともう4時を過ぎていた。

「あぁ、もうこんな時間。急がなきゃ」

建物を出ると携帯で地図を確かめる。

「うーん、とりあえず東京メトロに乗る」

始めて行くMAKIDAIの事務所は、中目黒駅から歩いてすぐ。

月に1〜2度は東京に来ているものの、いつも同じ場所ばかり通っているので、始めての場所は苦手だ。

「こっちだよね。大丈夫かな?」

地下鉄から出る階段も慣れない場所は分かりづらい。

案内図を見て確認はしたはずだが、

「あぁ、やっぱり反対側に出ちゃった。信号渡らなきゃ」

大回りしながら、ようやく見えてきた、ビル。

テレビでは、何度も見たことがある。

「あぁ、よかった。約束の時間に間に合ったぁ。MAKIさんに電話しなくちゃ」

ビルを見上げながら、携帯を耳にあてる。

「こんにちは。今事務所の前にいます」

…「楓さん?ついた?下まで行くよ、待ってて」…

MAKIDAIは、電話を切ると急いでエレベーターで1階まで降りる。

入口まで行くとガラス越しに楓の姿が見えた。

「楓さんっ」

ドアが開いて、MAKIDAIが出てきた。

「あっ、MAKIDAIさんっ」

楓はMAKIDAIの顔を見てホッとする。

「場所、すぐ分かった?」

MAKIDAIも楓の心中を察して声を掛ける。

「うん、ちょっと迷ったけど、なんとか。でも、なんだかここに立つだけで、緊張します」

MAKIDAIに会えて安心な反面、始めて芸能事務所に足を踏み入れる楓は緊張気味だ。

「緊張する?今日は、誰かいたかな?」

MAKIDAIには、いつもの風景だが楓には非日常的な風景だ。

「え、あ、そうか、MAKIDAIさん以外の人もいるかもしれないんですね。わぁ、それも緊張しますね」

「まぁ、まぁ、そんな緊張せず気楽にね。じゃ、行こうか」

中へと案内される。

「あっちが生徒さん達のスタジオね」

エレベーターに向かう途中にちらっと見えるスタジオ。

「2階は、事務所とジムとスタジオ。今から行くのが3階のミーティングルーム」

「はぁ、テレビで見たことあるけど、さすがですね」

エレベーターが降りて来るのを待ちながら、楓は緊張とワクワクでおちつかなかった。