とある日の事務所。

「MAKIさん、これ誰にあげるんですか?」

TAKAHIROが色紙にサインを書いている。

「ん?あぁ、今ちょっとお世話になってる人の子供」

「へぇ、名前は?」

「名前?んー、聞いてないから、無しでいっか」

「じゃあ、これ」

TAKAHIROは、MAKIDAIに色紙を渡す。

「また、MAKIさんのお得意のサプラ〜イズって感じっすか?」

「まぁね、サンキュー」

MAKIDAIは、ニコニコしながら色紙を受け取る。

「じゃ、また」

早々にTAKAHIROに挨拶をして、次は、アパレル部門へ行く。

「あ、MAKIさん。頼まれてたTシャツ揃ってますよ」

「ありがとうございますっ」

「デザインは、これでよかったですよね。」

「そうそう、オッケーです」

「じゃ、キッズ1枚とレディス2枚ですね。わざわざ、自分で手配するなんて身内の方の分ですか?」

女性社員がTシャツを渡す。

「いや、ちょっと知り合いにね。ありがとうございます」

MAKIDAIは、ご機嫌でTシャツを受け取る。

MAKIDAIが大事そうに色紙とTシャツを紙袋に入れていると、

「誰にあげるの?」

と工藤が声を掛けて来た。

「ああ、楓さんにね」

「楓さん?」

「うん、今度差し入れ持って来てくれるっていうから」

「ん〜、弁当のお礼にしては、豪華じゃん」

「それだけじゃなくて、こっちがオファーして指導して貰ってるのに、ついでだからって費用はいらないっていうし」

「あぁ、そうだよな。でも、今度の北海道のライブ、全部お前が費用負担するって」

「あぁ、それくらいは出して当たり前じゃん。ライブって言っても仕事込みだしさ。それに楓さんの子供達も俺らのファンだって聞いたから、喜んで貰えるかなと思って」

「え、この前は楓さんが子持ちだったってショック受けてたのに、今度は子供の気を引こうって作戦?」

「そんなんじゃないけど」

MAKIDAIが笑ってごまかす。

「まぁねぇ、楓さん、子持ちでも全然イけてるし、まぁ、一応シングルな訳だしね。俺も
独身だったらなぁ」

「工藤ちゃん、楓さんは俺のファンだからさ」

MAKIDAIが余裕な顔でそういうと工藤は、嫌味っぽく、

「あーあ、これキャンセルしよっかなぁ、北海道行きの飛行機とホテル」

とスケジュール表をチラつかせる。

「あ、北海道の、手配済み?おー、サンキュッ」

MAKIDAIは、それを受け取ると嬉しそうに確認する。