キュリオは<使者>を見送り、再び彼女のもとへと戻ってきた。
赤子はよく眠るのが当たり前だと思っていたが、不思議なことにこの子はあまり眠る気配を見せない。いつかその小さな体が音を上げてしまうのではないかと心配したが、いたって彼女は元気そうだ。

そうした今でも彼女はソファの上で大人しく座っており、キュリオの姿が見えると嬉しそうに手を伸ばしてきた。

「ひとりにしてすまなかった。寂しくなかったかい?」

腕に収まるほどの体を抱き上げ、彼女の柔らかな手の平を頬で受ける。キュリオはその甘い感触を楽しむように己の頬を幾度となく摺り寄せる。

「……好きなだけ触れるといい。そして私の顔を覚えておくれ」

幸せそうな王の微笑みを目にした家臣や女官たちは、彼の傍でその様子を微笑ましく見守っている。

「お前に名前をつけてあげると約束していたね。私がつけてもいいかな?」

意志を確認するように赤子の顔を覗きこむと、彼女は頬を染めながら嬉しそうに笑って声をあげた。

「きゃぁっ」

(この声は喜びを伝えるときのものだ……)

クスリと笑ったキュリオはあまりの愛しさに幼子の瞼へ唇を押しあて、戯れていたふたりは広間を出て中庭へと移動しはじめた。