「……すみませんキュリオ様……マゼンタ戻りましたぁ……」

ガラスの扉が開き、恥ずかしそうに姿を見せたのは先ほど派手にやらかした五の女神と呼ばれる彼女だった。マゼンタの後ろで静かに閉じた扉からは他の者が入ってくる気配は感じず、訝しげに眉を寄せたキュリオは彼女に問う。

「ウィスタリアが君を呼びに行ったと思ったが、彼女に会わなかったかい?」

キュリオの言葉にピタリと足を止めたマゼンタはバルコニーを見回し、姉の姿がないことにようやく気づく。

「えぇっ!? えっと……」

(嘘!? ……なんで? どこに行っちゃったの……ウィスタリア……)

冷や汗をかきながら必死に言い訳を探そうと瞳を彷徨わせているマゼンタ。彼女の動揺にキュリオが気づかないはずもなく――

「……彼女に会ったのか会わなかったのか。それだけ答えてくれればいい」

立ち上がろうとしたキュリオは彼女の様子に苛立ちを見せている。

(キュリオ様に嘘がつき通せるわけない……ごめんっ……ウィスタリア!)

「すみません、ウィスタリアには会っていません……」