「か、かしこまりましたキュリオ様……すぐにご用意いたしましょう」

 わずかに動揺したジルだが早々にミルクを鍋で温めはじめ、手頃なボトルを探して戸棚を開け閉めしている。その様子をじっと見つめていたキュリオはミルクが保管してある金属の棚の前までくると、年老いた料理長に向き直った。

「ジル、これからしばらく私もここにお邪魔させてもらうよ。ミルクの場所も覚えた。次回からは私がやるから今回だけ頼まれておくれ」

 片づけをしながらこっそり様子をうかがっていた他の料理人たち。
 なんとか平静を装ってはいたものの、キュリオのまさかの発言に隠し切れぬほど大きな衝撃を受けている。

(……つ、次からはキュリオ様がっ!?)

(キュリオ様がミルクボトルを手にっっ……い、いや! キュリオ様ならそれすら様になっているに違いないっ!!)

 男たちは美しい王のその姿を想像し、違和感があるものの……それにすら尊敬と憧れの眼差しで胸を高鳴らせていた――。