互いの熱を分かち合うように視線を絡ませて横になっているキュリオとアオイ。なるべく眠りに入りやすい環境を整えたつもりだが、目の前の幼子はパチクリと瞬きを繰り返し、眠気など微塵も感じていないようだ。

「…………」

(やはり眠れないみたいだな……)

不調による不眠とあらば、あらゆる手を尽くして彼女を癒したいと考えるが、生命に満ち溢れて目が冴えてしまっているのなら話は別だ。キュリオは無理に寝かしつけるようなことはせず、声を落として心の内を話しはじめた。

「お前が本調子に戻ったら皆に紹介したいと思っている」

「……?」

言葉の意味はわからずとも、赤子は話しかけられているという認識はあるようで、耳を傾けるようにわずかに顔を近づける素振りをみせる。

「すでに知っている者たちのほうが多いかもしれないな」

ふふっと楽しそうに笑ったキュリオは、彼女を娘として紹介出来る喜びに胸を躍らせている。

「いつか君と手を取り合って中庭を歩き、昼下りの東屋で腕に抱いて昼寝をしてみたい――」

(私はお前の寝顔見たさに寝たふりをすることもあるだろうね)

「……」

キュリオのささやかな願いに聞き入るように、じっと空色の瞳を見つめるアオイと、さらに自身の中にある明確なビジョンを口にする銀髪の王。

「あぁ、ディナーのドレスはなるべく肌の露出が少ないものがいい」

そう言いながらキュリオは、彼女の頬にかかる髪を優しく指先で退ける。

「この城には男が多い。おかしな気を起こさせないためにも……いや、やはり食事は私の部屋でとることにしようか?」

そしてその指先がアオイの小さな耳たぶに触れ――

「ピアスは空けて欲しくないな。お前はそのままで十分に可愛い」

(……体に傷をつける行為など私が許さない)

目の前に置かれた小さな手をとり、守りたいと願いながらも愛するが故の支配欲を掻き立てられ、押し隠すようにそっと口付けを落としたキュリオ。いまでも容易に想像できる、彼女が美しく育ったその姿にキュリオは熱い吐息をもらした――。