蒼白のまま、ぐったりしたアオイの体を抱き、すでに開いている悠久の門をくぐり抜ける。
キュリオは他へ目もくれず精霊の国の門を目指した。使者たちの報告通り、遠くに見えていたその門は一瞬の間に目の前まで移動してくる。

バスローブも肌蹴たまま扉の前へ立つと、聞き覚えのある声が驚いたような声をあげた。

『……この気配は……悠久の王?』

キュリオの気配に気づいたひとりの精霊が巨大な門を開いてくれた。

「……っすまない、急いでいる!! 精霊王のもとへ案内願いたいっ!!」

開口一番、精霊王への謁見を願いでたのは悠久の王・キュリオだ。
そして運良く門の内側にいたのは先日、書簡を届けにきた光の精霊だった。

(なぜこのような時分に……悠久の国はまだ夜中のはず……)

しかし、その姿から見ても穏やかな彼からは想像もつかぬ焦りを抱いているのは一目瞭然である。

『……御意……』

彼に抱かれている小さな赤子を見た光の精霊はなんとなく予想がついた。彼女からは生気がまったく感じられず、死人(しびと)のようだったからだ。

 光の精霊は人型になるのをやめ、すぐさま心当たりのある場所へと向かう。その後ろを羽ばたいたキュリオが追いかける。
途中、風の精霊たちが好奇の眼差しでキュリオの後をついてきた。

『その翼……もしかして貴方が悠久の王?』

『ねぇねぇっ! そんなに急がなくても時間はいっぱいあるのでしょう!?』

「…………」

誘いの声が耳に入っていないらしいキュリオと光の精霊は速度をあげ彼女らを振り切った。

『まずは神殿へ』

「……あぁ、すまない」

(頼むエクシス……君しかいないんだ……っ!!)

冷たくなったアオイの体をしっかり抱きしめ、わずかな望みにかけるキュリオだった――。