「…はぁぁ~」


落ち着かない…
心がずっとサワサワして、
どこに居ても、何をしてても。


昨日出会ったばかりの
香坂さんを思い出してしまう。


何度も経験した指導係…
見られていることを意識するなんてこと、
今までなかったのに。


「…はぁぁ~」


「だあぁーっ‼うざいっ‼」


隣から聞こえた暴言を吐いたであろう人物を睨む。


「…んだよ…いきなり…」


「お前のせいだろうがっ‼…朝から何回溜め
息を繰り返せば気が済むんだっ‼」


木村の問いにすぐには答えられなかった。


「……えっ…俺、溜め息吐いてた…?」


「いやいやいや、朝からずっとだぜ…何?
無意識に溜め息を吐かなきゃならないこ
とでもあった訳?」


木村との会話で一瞬はいつもの俺に戻ったのに。
木村の言葉でまた香坂さんを意識する。


いつもと違うことがあったのは、
香坂さんと出会ったこと。
香坂さんに出会ったことが。
無意識に溜め息を吐くこと…?
それって…
1つの結論に辿り着いた俺は、瞬間にして顔が赤くなる。


「…え…⁉」


そんな俺を見て、凝視したまま木村が固まる。
何だってこいつの前で、
こんな顔見せなきゃならねぇんだっ‼


「見んなよ…」


力なくそう言って、
右手で顔を覆い、木村の視線から逃れるように横を向く。