俺の話を聞き終えた木村が、


「……マジ天然たらしだよな…神山って」


「たらしじゃねぇ!
生粋のたらしに言われたくないっ‼」


他の誰に言われるより、否定したくなる。


「確信犯より、無自覚のが質悪いだろ?」


「…確信犯のが問題だと思うが?
それに、昨日の俺は…無自覚じゃない」


一度触れたら、もっと…ずっと触れたい…
そう、思った。
真琴さんの反応が可愛くて、その全てを
俺の腕の中に閉じ込めたいって…
かなり、暴走した自覚がある。
その結果…泣かせてしまったんだよな…


「…早すぎた…のかな…?」


俺がぽつりと洩らした問いに、
いつになく真剣な顔の木村が、


「どのタイミングで言っても…
真琴ちゃんは泣いたと思う」


そう言い切る木村。


「…真琴ちゃんがお前に言った言葉の意味
と、泣いた理由…俺は知ってる」


木村のその言葉に、
瞬きを忘れて木村の顔を凝視する。


「…知りたいか?」


「知りたいか…と、問われれば…
正直知たい。知りたいが、それはお前の
口からじゃない」


俺が知らない真琴さんのことを、
知っている木村に、少なからずの嫉妬心はあるものの…出会ってから14年の年月の木村と、10日にも満たない俺では…張り合うのも無理な話…。
木村の知ってることは…
真琴さんの心にふれるもの…
他人から聞いて知ることが出来ても…
意味がない。


「…そう言うと思ってた。だから、敢えて
言わなかった。
因みに森田さんと真琴ちゃんが、叔父と
姪の間柄であったことも、知ってたけど
…悩んでる神山が面白かったのと、お前を
試したかったから言わなかった」


悪びれもせず、にやにや笑いながら木村が言う。


「お前に試される意味が分からないが…
それよりも、俺で面白がるな‼」


「それは無理な話だ。それより…」


その言葉の続きを言わず、スマホを取り出し、誰かにメールを打ち始める木村。


会話の途中だろう…?
素の木村のマイペースさに、怒る気力も失せる。


「よしっ‼神山準備しろっ!
そのままアラカルト直行出来る服装にし
ろよ‼」


「はぁ!?何で、
お前と出掛けることになってんだよっ‼」


「悪いようにはしねぇよ。良いから早く
準備しろって!」


理解に苦しむことは度々あったが、
今の木村が一番、訳が分からない。


急き立てる木村に、
結局言うことをきくはめになる俺って…
どうなんだ?