【side 真琴】


「へぇ~、やるね!神山くん」


すっかり自分のキャパシティーを越えてしまった私は、同じく休日であった中学からの親友の沙紀をお茶に誘い、最近のこと…
特に修二くんのことを、相談した。


沙紀は一樹くんの姉で、一樹くんが何度か家に連れて来たことがあり、修二くんをよく知っていた。


「神山くんは、一樹なんかより数倍良い男
だし、誠実で優しくて…私は良いと思うけ
ど…」


「…修二くんに、問題なんてない。むしろ、
私が問題なの…」


珈琲を一口飲み、そういう私の顔をじっと見つめる。


「…歳の差…が問題?」


「それも、全く問題ないとは言えないけど
…今時点では、そこじゃない」


あの後…
堰を切ったように、涙が止まらない私の手を引いて、家まで送ってくれた修二くん。


7歳も年上なのに…
何やってるんだろう?
どっちが年上か分からなくなる。


『こんなに泣かして、ごめんね…でも、
俺が真琴さんを好きな気持ちは、何があっ
ても変わらない。真琴さんに、俺を好きに
なってもらえるように、今後はもっと、孟
アピールするつもりだから…覚悟、してて
下さいね」


別れ際、それはとても爽やかな笑顔の修二くんが私に告げた言葉…


本当は…もう、
私の心は修二くんに向いている。
昨日の修二くんの、態度に始終どきどきして…
修二くんの言葉が嬉しくて…
本当に嬉しくて…それなのに、気持ちを返せなくて…言葉に出来ない想いが、涙となって流れた。


「私は…彼に相応しくないから…」


その一言で、私が何を言いたいか沙紀は分かってくれた。


「真琴…過去は過去だよ。それに、真琴何
も悪くないでしょ?」


「…どうなんだろうね…私に落ち度がなかっ
たら、続いてたかもしれない。
一人になった時は、全てのものを恨んで、
何もかも失ってしまったって…何度も嘆い
て…そうなってしまった事実を受け入れた
くなかった。家族や周りに心配させて…
自分の殻に閉じ籠って…
もし、また同じようなことが起きたら…
私は耐えられない…」


俯いて自分の思いを言葉にする。
そう…私はただ…傷つくのが怖い。


「…いっそ、全てをさらけ出したら?」


「…え…?」


思ってもいない沙紀の言葉に、ただ唖然とする。


「全て知って、気持ちが変わったら…
神山くんもそれだけの男だったってこ
と。同じになるかどうかなんて、
先に進まなきゃ誰にも分からない。
ただ1つ忘れないで…神山くんは神山くん
であって、彼とは違うこと。
一歩進んだ先に、見えるものがあるかも
しれないって、私はそう思うよ」


「そう…だね…」


全てを伝えるのは、本当は怖い。
私の全てを知って…修二くんがどう思うのか知るのが怖い…
でも、もう自分の気持ちから目を背くことが出来ないくらい、彼に惹かれている。


「沙紀…ありがとう」


「どういたしまして」


怖がってばかりじゃ駄目…
修二くんに知ってもらうことで…
本当の意味で、私は過去と決別出来るのかもしれないから───