【said 修二】


言ってしまった…
俺も大概堪え性がないな。
いずれ伝えるつもりではいたにせよ、
もう少し、俺の人柄を知ってもらって…
と、思っていたんだけど。


真琴さんは困惑した表情と、
そして
悲しみが入り交じった表情を浮かべている。


「…私……」


この表情に…
ぎゅっと胸が締め付けられる。


「今すぐ…答えがほしいわけじゃありません
…だから、そんな悲しそうな顔…しないで
下さい。真琴さんに、俺の気持ちを伝えた
かったんです」


「…でも、私…私は…修二くんに、想っても
らえるような…好意を向けてもらえるよう
な…そんな立場じゃないんです‼」


吐き出すように、そう言った真琴さん。
彼女の中に…心に、何か重い楔が刺さっている。そんな風に感じた。
今の真琴さんの表情…
仕事中に何度か見たことがある。
普段見せる、柔らかで穏やかな優しい笑顔と、対照的なとても…悲しい顔…
その表情に切なくなったのも、事実。
その心に寄り添いたいと思った。


真琴さんが抱えているものが何であっても…
俺の気持ちをは変わらない。


「俺は…恋の始まり方って、ずっと…
ある程度 、相手の中に自分が惹かれる何
かを感じた時に、始まるものだと思って
いました。でも、真琴さんを一目見た瞬
間、一瞬で心を奪われたんです。
正直…悩みました。今までの自分と違いす
ぎて…で、悩んでる時に木村に言われたん
です。『存在そのものに惹かれたんだろ
う?』って…そう言われて、凄く納得でき
て…俺も真琴さんも…今時点では、お互い
のこと、知らないことの方が多い。
でも、好きなんです。
この気持ちを、今更なかったことには出
来ない。
そして、俺にとって真琴さんは運命の人
だと思っています」


そこまで一気に話し、一旦口を閉ざす。
真琴さんの目に、大粒の涙が浮かび、その頬に涙がつたう。


「俺のこの気持ち…迷惑ですか?」


真琴さんはただ、無言で首を横に振る。


「良かった…今は、それだけで充分です」


真琴さんの頬に手を添え、親指の先で目尻の涙を拭く。


「泣かせてしまって、すみません」


その言葉にも、真琴さんは首を横に振るだけ…
何が、そんなに真琴さんを苦しめているんだろう…?
その悲しみを、俺が消せればいいのに──