【side 修二】


森田さんの返答に安心した俺は、一息つこうとエスプレッソのカップに手を伸ばす。
バリスタの資格を持つ、
森田さんのエスプレッソは、格別に旨い。
オーナーシェフでいながら、
色んなスキルを持ち…それでいて俺たち従業員と同じ目線でいてくれるこの人を、
俺は心の底から尊敬している。


良かった。
これまでの恩を仇で返すような事にならなくて…
気まずい思いを抱きながらでは、
きっと…
今までのような関係は築けない。


そんなことを思いながら、エスプレッソを飲んでいると、


「俺の自慢の看板息子が、
近い将来甥っ子になる日がくるかもしれ
ないね~」


「…っ!?ゴホッ…ゴホッ‼」


森田さんのそんな台詞に盛大に噎せて、
エスプレッソを吹き出しそうになる。


「いきなりっ…何をっ…言うんですかっ!?」


そんな俺にタオルを手渡しながら、
穏やかな笑顔のまま…


「まぁ…気が早いのは重々分かってるよ。
ふたりはまだ、始まってもいないわけだ
しね…でも、俺としてはさ…可愛い姪っ子
と、自慢の看板息子の未來が
そうであったら、凄い嬉しいんだよね‼」


そこで森田さんは言葉を切る。


「…だから、俺は修二くんを応援するよ」


その言葉に、どれだけの思いが込められていたのかなんて…
この時は気付かなかった。
ただ、心から嬉しかったのは言うまでもなくて…
森田さんが大事に思う存在に…
想いを寄せて、
近付くことを許されたんだと…
何とも言えない気持ちが、
込み上げて、目頭が熱くなる瞬間だった。


「…っ…ありがとう…ございます‼…
凄い、嬉しいです‼」


「お礼を言われる事じゃないよ…
俺の希望的予想?…みたいなものだし。
さぁ、この話はここまでにして…
報告を訊こうかな?」