【side 大輔】


俺の最終質問に 、
順に答えてくれた修二くん。


3年前に店の前でぶっ倒れてた
同じ人物とは思えないほど、
良い顔と、良い目をしてる。
その表情をさせているのが、
真琴なんだね。


まぁ…修二くんとの出会いは、俺にとっても
とても衝撃的だった。
あの時は、ただ空腹の修二くんのために
作ったナポリタンを食べてほしくて、
払うお金がないからと断り続ける彼に、


『身体で払ってもらうから』


と、言った冗談を真に受けて…
あのあと、店の雑用をやってくれた。
修二くんの真っ直ぐさは、あの頃と変わらない。
賄いが付くから、バイトしないかと、持ち掛けたのは俺。
あんなに辿々しかったことが、今では難なくこなす。
周りをよく見て、先を見越して動ける。
人の気持ちを大切に出来るから、自然と慕
われる。


結果的に…たったナポリタン一皿で、
俺はとても良い人材を手に入れた。


他人のことには凄く敏感に反応するのに
自分に向けられる好意には無頓着で、


そんな修二くんが、真琴に恋をした。


その瞬間を側で見ていた俺は…
初々しくて、
思わずにやけてしまったけど…


自分の殻に閉じ籠る真琴に、
1歩ずつでも前進してほしいと思って、
ドルチェで働くことを提案した。


家族の労りの言葉や、態度じゃ駄目なら…
心の傷を取り去って、
心から真琴を大切に出来る存在が必要だと思っていたけど…


その存在が修二くんなら…いい。
この3年で、
修二くんの人柄は分かってる。
本当は試す必要ないほど…
俺は修二くんを認めてるし、
信頼している。


ただ1つの心配を除いて…


でも、それは俺が口出しすべきことじゃないから…
真琴との縁が深くなるにつれ、
きっと修二くんなら、
自身で導き出すから…


どうか──
この先の未来が、
ふたりにとって…
明るい光りに包まれるように……


そう、願っているよ───


── side 大輔 end ──