思いもよらない台詞…
まともに話したのは今日が初で、
俺に至っては迷惑しか描けていない。


『…ダチ…?』


『だろ?─いいから、とりあえず早く連絡
しろっ‼』


神山に押しきられ家に連絡した俺は、
一晩神山に世話になった。
熱に弱い俺は、意識を飛ばすのも早かったが…熱にうなされながら、何度も額に誰かの手が触れるのを感じていた…


すっかり翌日の朝には熱が下がり、
神山が作った朝食に食らい付いていた。


『旨っ‼マジで旨いんだけどっ、
神山良い嫁さんになれるわ‼』


『誰がなるかっ!
食べるか喋るかどっちかにしろっ‼』


そう言われてとりあえず口の中の食べ物を飲み込んで、
疑問に思っていたことを訊く。


『神山って何で強いの?』


『ガキの頃から合気道習ってた』


『因みに、料理歴は?』


『ドルチェに勤めてからだから…
まだ3ヶ月だな』


3ヶ月でこの腕前…
そして強い。
迷惑掛けっぱなしの俺に恩を売ったって
良いのに…それもしない。
懐のでかさが半端ない。


『何で俺を知ってた?』


『…目立ってたから。
逆に木村を知らない奴居んの?』


その言葉…そのまま神山に返したい。


『…つーか、お節介かもだけど…
お前、本音隠し過ぎ…相手もだけど、
もっと自分大事にしろよ。
お前にとって、自分よりも大事に思う
相手が出来た時に苦労する…と俺は思う』


神山の発した言葉に固まる俺。
本音を隠してるなんて、今まで誰も気付かなかった…
格が違うんだ…
敵わないはずだ。
それまで払拭出来なかった気持ちなんて、いつの間にか消えていて、代わりに得難いものを手に入れた。


『神山には素でいくわ‼』


『…俺の話訊いてねぇだろ?…まぁ、良いけ
ど』


──あれから3年
あの時を境に神山とつるむようになった。
一方的に俺が絡んでいってた気もするが、
神山は、一度自分の懐に入れた相手に対しての情が熱い。
常に自分の利じゃなく、相手を見てる。
真琴ちゃんに関する情報を、
俺は敢えて…神山には伝えなかった。
それを知ったとしても…
神山は変わらないと思ったからだ。


気付いて欲しい…
必ず傷付いた心ごと、
引き上げてくれる存在があることを──


─ side 一樹 end─