それからの俺は、
ストーカーかというくらい、神山の動向を探ってた。
見た目は確かに、俺と変わらずイケメンなのは認める。
じゃ、何が違う?
振られても尚、
好きだと引き付けるものが何なのか。


空き時間に図書室にいるのを見かける。
神山の近くに、自分の身長より少しだけ高い棚に爪先立ちで手を伸ばす女子がいる。
その子の後ろから一冊の本を取り、その子に手渡す。


『これでいい?』


『ぁ…ありがとう』


頬を赤らめた彼女。あ、これは恋に落ちるフラグだわ…
案の定、助けられた彼女はその後も神山を目で追っている。


重い教材を運んでいる子が居れば、代わりに持ち…人が敬遠する嫌がることは、率先してやる。
そういう面で、女子だけじゃなく男子にも人気があるようだ。


俺にしてみれば、
ただの偽善者にしか見えない。
狙ってやってないとか、有り得ない。


『神山ぁ~!3限の課題写させて‼」


1人の男子が大声で神山に泣きついてる様子が目に入る。


『…3限までまだ時間あるだろ?』


『でも俺苦手な単元でさ、空き時間使って
もどーせ間に合わねぇよ…だからさ─』


『苦手なら尚更写すのは問題だろ?』


『…そうだけど…なぁ、今回だけでいいから
さ、頼むよ‼」


面倒な奴…
俺なら、さっさっと見せてやるけどな。
こんなやり取りが不毛だ。


そんなことを考えていると、
一瞬にして神山の纏う空気が変わる。
真っ直ぐにその男子を射ぬく視線。
その視線の先の男子が固まっているのが分かる。


『お前は何のために此処にいる?目指すも
のがあるからじゃないのか?
写すのは簡単だし、楽だ。でも、それは
お前のためにならないだろ?』


『…あ、ごめん…』


神山の真意が伝わったのか、その男子は素直に謝った。その様子に神山が笑顔を見せる。


『俺も3限まで時間あるから、どうしても分
からなければ聞いて』


『サンキューな、神山…』


こういう面が、
男子にも一目置かれる部分か…
そして今この場面も、かなりの注目を浴びていたのだが…
そんな視線をも受け流している。


ただの偽善者じゃないなら、
かなりのお人好しだ。


俺には出来ないこと…