「年の差を気にしている訳じゃない」


これは本当だ。
7歳年上と聞いて、『ああ、やっぱり』と思う。
香坂さんが纏う、落ち着いた雰囲気…
第一印象が、大人の女性と思ったくらいなのだから…7歳年上だから、やっぱりこの気持ちは違うと…否定する理由にはならない。


「じゃ、他に何が気になるんだ?」


「…俺はまだ、彼女のことを知らない。今ま
では、相手の内面性を知って惹かれていく
ことが多くて…昨日出会ったばかりで、し
かも…一目見た瞬間になんて…俺にとって
はイレギュラー過ぎる」


そう…知っていることは、名前と年齢だけ。
昨日に至っては名前しか知らなかった。
それなのに─


「 一目惚れ…外見からってのが気に入らな
い?自分のセオリーじゃないと…そういう
こと?」


木村の言葉に頷く。


「それの何が悪い?
確かに、相手の内面に惹かれて始まる恋
もある…でも、毎回同じとは限らない。
いつ、どこで、どの瞬間になんて…誰にも
分からない。
知らないなら、これから知っていけばい
いだけだ。
一目惚れって、相手の存在そのものに惹
かれたってことだろう?」


昨日から、どんなに考えても答えに辿り着けなかった。探しても見つからなかったパズルのピースが、埋まったような…そんな感覚。


──存在そのものに惹かれた──


木村の言葉がストンと心に落ちてきた。