いつも通る道を木村と歩く。
何となく、木村が何処へ向かっているか分かり、声を掛けようとしたら、


「…神山さん?」


木村から視線を外し前方を見ると、俺の目の前に、香坂さんがいた。
香坂さんの存在を認識した途端、心拍数が上がる。


「こ、香坂さん…こ、こんにちは!偶然です
ね…買い物ですか?」


最初の方はどもってしまったが、何とか平然を装い笑顔で話し掛ける。
そんな様子を黙って見ていた木村が、香坂さんに声を掛ける。


「もしかして、真琴ちゃん?」


何で木村か香坂さんを名前呼び!?
香坂さんが、俺の隣の木村に視線を移す。


「え…あ!一樹くん?久しぶりだね‼」


そして香坂さんも木村を名前で呼ぶ。
昨日、俺が惹き付けられた微笑みと違う満面の笑顔…これはこれで可愛いと、見とれる一方で、さざ波出す心。
知り合い…なのか…
どういう?
木村は普段見せないあどけない笑顔で、香坂さんと話している。
心を許している相手…なのだろう。
何だか居心地が悪い。俺が居ない方がいいんじゃないか…と、1人で勝手に沈んでいると、


「…で、真琴ちゃんと神山は何で知り合いな
の?」


木村の問いに香坂さんが答える。


「私、昨日からドルチェで働かせてもらっ
てるの。神山さんは私の指導係さん」


「へぇ…」


木村の何かを掴んだような視線が痛い。


「落ち着いたら、姉貴に連絡してやって」


「うん、分かった。宜しく言っといてね!
神山さん、今日もご指導宜しくお願いし
ます。それじゃ」


「はい、また後で」


香坂さんは俺に会釈をして、木村に軽く手を振ってその場を後にした。
その後ろ姿を見送る。
木村と俺の対応の差に、少し胸の痛みを感じた。