彼等の干渉を多少なりとも受け入れているのだって、相当な譲歩から成る関係なのだ。暖簾に腕押し、とは良く言ったものだ。

「蒼、それは無理」

手持ち無沙汰のついでに折っていた折り鶴を、彼の頭に乗せる。蒼は納得がいかないと、乗せられた鶴を片手に口を開きかけ、瞬きの一瞬に煌めいた瞳に映った赤い影。

澄んだ、綺麗なそこに映る醜悪なそれに、抑え切れない衝動に駆られて握り締める拳。

「篠原さん」

動き出そうとした右手を掴み、制止をかけるように紡がれたその声に後悔する。

掴んでいた先生は、私が力を抜いた途端に合わせて手を離し、にこやかに微笑む。

些細な変化に、蒼は気付いていないらしく、ほっと胸を撫で下ろしながらも後ろめたさが残る。

何ですか、と胡乱に見上げると、先生は一言残して教室から出ることを促す。

「大したことではありませんが」

眉根を下げ、置いていかれることに不満を漏らす蒼。その姿に子犬を重ねて見てしまい、可笑しいと思いながら鶴に目配せする。

それ、あげるからと言っても、子供じゃあるまいし喜ぶことはないだろうと踏んではいたが、彼は存外子供っぽく、嬉しそうに目を瞬かせた。