それぞれの暴走族には、俗に姫と呼ばれる者がいたりする。もちろん、すべてに当てはまるかと言われれば、むしろかなり稀だろう。

姫、と呼ばれるのはその族に護られるべき存在であり、大抵の場合が総長の女であり、所謂“寵姫”というものだ。頭の女を護るのは、その下につく者としては絶対であり、もちろんそれは弱点とも成り得る存在だ。

そもそも、私は護られるというのはガラでもない。護られているだけで動けないのは、一番辛いというのを知っている。結局は自身の手でどうにかするしかないことも。

「なっちゃん、良く聞いてね」

ずいっと近寄った顔に手で押し退けるが、あまり意味がない。私はぞんざいな返事を返しつつ、手元へと視線を戻すも彼は平然と話を続ける。

「僕らとなっちゃんは仲が良いでしょう?」

「それは初耳ね」

「仲良いの! だからね、もう他にその情報が行き渡ってる可能性があるわけ。んで、僕らを潰そうとしてる奴らが狙ってるかもしれないでしょ」

授業が今日も今日とて無いに等しいからといって、ここまで自由にしていていいのだろうか。学生の本分とは一体全体どこへ行ってしまったのか。