滲み出る苛立ちは、己の不可侵領域へと入り込もうとする、それこそ不定の輩へのものだろう。

そして愚弟にも、その顔を合わせたことだろうことを思うと、頭痛がする。

せめて、――せめて頼まれたことだけでも守らねば。

大人というのはどうも立場に囚われがちで、思ったように動けないものだ。それが少し歯痒くもあり、さらには悔しささえ覚えるものだ。目の前にあるというのに、自由に立ち振る舞えない上に、手を伸ばすことさえも難しいのだから嫌になる。

しかしいくらそう思っていても、何も変わらない。彼女が変わろうと、彼女自身がアクションを起こさない限りは。それは口出しすら躊躇われる、彼女の問題なのだから。

出来ることと言えば、彼女の、しいては彼女等のサポートぐらいだ。

「俺も若ければな……」

無意味な呟きを零すが、あまりにも荒唐無稽過ぎる暴論だ。それでは駄目だ。

赤い表紙の金箔で飾られたその題をなぞらえて、ふと思い返す。そういえば、彼女はこの作者のことをどれだけ知っているのだろうかと。