私が、怖がると思ってのことなんだろう。それでもその程度の安い殺気に狼狽える程、私は普通の女の子ではない。

可愛げもへったくれもない。

「私は終わった。だからもう、関わらないで。大嫌いなの、そういうの。私はあなた達を構ってる暇なんてない」

今まで耐えていた本音を吐き出してすっきりする。関わるなというのは興味などないという証で、では大嫌いというのは一体何に向けた言葉なのか。突き刺さるその刃は、私へと向けられたものだ。

そう言い残し、振り返ることなく歩く距離がいやに長く感じられる。言葉を失った彼らが流すのは重い沈黙で、自身の鼓動が鼓膜に直接響くみたいだ。

きっと、言われたことなかったんだろう。“大嫌い”などという、存在の否定を。ましてや女の子に。傲慢なその態度に、さらに苛立ちが増してくる。

やっと辿り着いたその銀色のドアノブに触れると、ひんやりとしたそれに思わず手を引っ込めそうになる。けれど逆に力を込めて回すと、ギィっと鈍い音を立てて開かれる扉。