「人の人間関係にはあまり口出しするのは、如何なものかと思いますよ。たとえ若であっても」

彼の仲介により、手を引くもののその目は微かに私の底を見ようと覗いている。

だから私は悟られることのないように、その瞳から逃れようと前髪で隠してしまう。

事なきを得た場の雰囲気に、先生はそのまま私の頭を撫でる。そして職員室に帰ろうとするが、私はその手を掴んで引き戻す。

彼がそこにいるというのなら、話は早いと思うのだ。

「先生、後日改めます。“宴会は朝方までに”」

急に引き留める私の行動に、どうしたんだと口を開かれる前に早口で連ねる。

その意味を真に理解できるのは、この場に私と彼だけ。あの場で過ごした者ならば、あの人が使っていたこの合図も知っているはずだ。

案の定彼は解ったようで、何も言わずに頷くと出て行った。

「なっちゃーん、今のなにー?」

すかさず擦り寄る蒼にも、訝しげに見つめる倖も、もちろん睨んでくる修人にもなんでもないと言うしかない。