蒼達が訳が解らないという顔をしているのに、笑いを堪えたくなるがそれでも私は言うつもりはないのだ。

「何、今の」

「さあ?」

「え〜、2人だけの秘密〜?」

駄々を捏ねるように訊いてくる蒼と違って、倖と修人は無言で見つめてくるのはやめて欲しい。

それでもすぐに倖がどうでもいいと告げるのは、兄に対する何かしらの思いからか。薄く笑う修人はどこか見守るような眼差しで、思わずじっと見てしまう。

移された視線になんだと問われているようで、逸らしてしまえば彼は私に近付くと、頭の上に手を置いた。

私が座っているせいで丁度いい感じになっているが、歳なんて一つしか離れていないのに子供扱いとはどういう了見か。睨みあげ、不貞腐れたように眉を寄せれば彼は徐ろに撫でる。

「なに」

「いや、可愛いなって」

優しく撫でるその手の温かさに、心地良いと思いそうになるが、私はそんなことで絆されるほどではない。

可愛いなんて、私に使うべき言葉ではなく、蒼のような存在に言うべきだろうに、何を思っているのかよく解らない。