修人が眉を寄せ、壁にもたれたままに不思議そうな顔で言った。

「なんで?」

見た目だけは整っているから、モデルとしても通用しそうなその出で立ち。

「なんでって、そりゃあ先生に手を上げたんだから、処分を聞きに行かなくちゃでしょう」

「ああ、そういうことですか」

それを聞いて納得したのは倖で、彼は安心してくださいと先生を見やった。彼も彼で納得しているようで、兄弟揃って同じ微笑みをされても困る。

私だけが未だ疑問が渦巻いていて、把握できていないのだ。

「ここは男子ばかりですからね、傷害沙汰なんて良くあることですよ」

「血気盛んであるうちは、若さ故の過ちは繰り返すべきことですから。過ちを通して大いに学ぶ、それがうちの理事長の言葉です」

「つまりお咎めなしってことだよ、なっちゃん」

そんなものなのだろうか。

ここの校風というよりも、変わっているのは理事長であるらしい。

ともあれ、変な理事長の変な方針のおかげで救われたことに変わりはなく、教師であり被害者でもある先生がそれで良しとするのであれば、これ以上掘り返すのも利はない。