それに、彼等が信用に足るのかも、信頼できるほど強いとも思えなかった。折れてしまったら、と思うとどうしても喉に引っかかる言葉は出てこなかったのだ。

情報の漏洩だって困るし。

「言ってません。これから先も、言うことはありません」

「それは、彼等が狼嵐だからですか」

首を横に振った。

それだけじゃない。そんなのは些細な問題であって、重要視するべきところではない。

「――あの人達は、弱いから」

弱いなんて、自分も同じだというのに、豪語するのもどうかと思う。口に出すのは少しだけ幅かられたが、それでも私の知っている強い人達には到底敵わない。

「私は、逃亡者なんですよ」

鬼龍も、鬼麟も、篠原も。もちろん、あの場所からも逃げてきた。逃げることしかできない、憐れな逃亡者。

漏らし過ぎたかもしれない。そんな心配をしている中、先生はさして言及するわけでもなく、そうですかとだけ返した。

問い詰められたりしなくて良かったと思っている反面、どこか拍子抜けの反応。

先生はこれまでの空気を一新するかのように微笑むと、扉を指さした。