ヒューとアランを乗せたジープは、グルカ兵の私兵部隊に護衛されながらミャンマーを進む。

まだ長閑な農村風景を残した、ミャンマーの土地。

しかしこの国ではまだ、『バーマ』という呼び名が残っている。

この呼び方は軍事政権以前の国名ビルマの事であり、日本でも多くのメディアが『ミャンマー(旧ビルマ)』との表記を行っているように、現在のミャンマー軍事政権に反感を抱いている者は『バーマ』と呼ぶ傾向がある。

「つまりだ、この国ではまだミャンマー軍とその他の民兵との戦いは続いているって訳だ。第三次大戦だ第四次大戦だってデカイレベルの戦争は終わっても、この国では戦争は続いている。国内レベルの、ニュースには取り上げられもしない戦争がな」

「……」

アランはヒューの言葉を黙って聞いている。

思うのだ。

金で雇われ、臓器ブローカーの護衛という仕事を引き受けたアラン。

金になるならば、どんな悪党の仕事でも引き受けるつもりだった。

しかし。

このヒュー・バレンタインという男は、悪党に徹し切れていないのではないかと。

元Disposableの裏切り者という触れ込み。

だがこの男は、言うほどに救いようのない外道ではないのではないかと。