鬱蒼としたジャングルが続いていた。

ミャンマーの国境地帯。

ヒューとアランは、徒歩でひたすらにその密林地帯を進む。

「……」

アランが時折足を止め、後方を気にする。

ヒューともそれとなく気づいていた。

追っ手だ。

どんなに音をさせず、気配を殺した所で、人間というのは必ずそこに居た、或いは居るという痕跡を残す。

如何に風下から近付こうと、如何に身を潜めようと、『痕跡を限りなく隠す』だけで、『痕跡をゼロにする』事は出来ない。

優秀な兵士ほど、その僅かな痕跡を嗅ぎ付け、待ち伏せ(アンブッシュ)や追跡を察知する。

「大した追跡術(トラッキング)だ」

アランが呟いた。

あれ程の追跡技術を持つ者から、完全に逃れる事は難しいだろう。