あの時私は息を飲むほどその顔に見惚れた……のは人生最大の汚点だ。

「履歴書、拝見しました。栄養士として二年お勤めですね。どうして、ケータリング部門をご希望なのでしょう。我が社は栄養指導部門もありますが」

当然の質問だった。だから、用意していた答えをハッキリ伝えた。

「私は奨学生です。卒業と同時に返済があります。将来路頭に迷わないためにも、資格は多いに越したことがないと思っています。故に、大学在籍中、食堂で働いていたので、これを生かそうと、独学で調理師の資格を取りました」

「それは、勤勉ですね」

ん? いつもと違う反応。

私は一見、お嬢様風で、いつも見た目で判断されてしまう。
頭の中はお花畑のパー子ちゃんと……。

確かに、昔はそうだった……かもしれない。
イヤ……若干、名残はあるかも、だが……。

珍しく社長は、私の見た目に惑わされることなく真剣に耳を傾けてくれていた。