如何せん。何故か社長が絡んでくる。現状のように……。
初めて社長に会ったのは面接の日。今から二年前、二十四歳の時だ。
あの時、社長の素を知っていたら、今、私はここに居なかっただろう。
「社長の殿宮恭吾です。皆さんからは通称名である『殿様』とか『殿』と呼ばれています」
彼は何の前触れもなくそう言った。
そんな通称名など、どうでもよかった。
それより、こんな大きな会社なのに、社長直々の面接に、ビックリだった。
後で知ったのだが、ケータリング部門の中途採用の面接だけだそうだ。
通されたのは、社長室だった。
二十九歳の若者らしい部屋で、スッキリとしてシンプルだった。
それは三十一歳の今でも変わらない。
結局、こういうのが好きなのだろう……性格もそうだったら、どんなにいいか。
彼の第一印象は、何と美しい顔! だった。
南向きの窓から燦々と射す陽の光を浴び、少し癖のあるダークブラウンの髪が後光にも似た煌めきを放ち、その美しい顔をより美しく輝かせていた。


