「……冗談ですよね、殿宮社長」
鳳凰社長がコホンと咳払いし言葉を発する。
「いえ、偽りなく本当のことです」
「なっ何を言っている。そんな話、微塵も聞いたことがないぞ!」
総帥が顔を真っ赤にし、声を荒げる。
ウワァ、最悪の展開になってきた。
「それはそうでしょう。秘する恋ほど燃え上がるもの、と総帥もおっしゃっていらしたでしょう」
でも、流石、社長。全然動じていない。
「そっそれは……」
グッと唇を噛み締め悔しさをあらわにする総帥に、社長はしてやったりとほくそ笑む。
何だ、子供の喧嘩か?
「長い間口説いておりましたが、このたび、ようやくプロポーズを受けてくれまして」
社長が私の薬指に視線を向けると、皆の目がつられて薬指に集中する。
ウッ、恥ずかしい。
「ようやくとは、いつからなのだ」
総帥の憮然とした声が聞く。
社長はニッコリ笑い「それは秘密です」と口元でシーのポーズを取り、魅惑的にウインクする。
クッ、嫌味なほどカッコイイぞ!
その時だ、ズット黙っていたお嬢様がスックと立ち上がった。
白地にピンクの薔薇が散りばめられたAラインのワンピースの裾が、フワリと翻る。
目の錯覚? 彼女のあちら側に、メルヘンの世界が見えた。
瞳をパチパチさせ、お伽の国のお姫様を見る。
彼女は両手を胸の辺りで組むと、キラキラお目目でキャッと可愛く狂喜の声を上げた。
「ステキだわぁ~!」


