ガシャーン

「嗚呼。姫、今日は厄日?」

床に縮こまり割れた皿を片付ける私を、同僚の赤川真梨香が腰に手を当て冷ややかに見下ろしている。が、別に彼女と私の仲が悪いわけではない。

理由は分からないが、彼女はケータリング界のドS系オラオラ種の女王様を目指しているらしい。
だからこの態度なのだが、残念なことに、身長百五十五センチ、八十キロの体重では、ドS系ポヨポヨ種の乳母にしか見えない。

本当に残念だが。

せめて、と部所の皆は彼女の努力に敬意を称して彼女をこう呼ぶ。
『真梨香様』と。当然私も。

「真梨香様、仰せの通りです。朝から何やってんだかです」
「そういう時は何か良からぬことが起こるものよ。楽しみだわ」

口元に手の甲を当てがいオーホホホと高笑いする彼女を見ながら、無きにしも非ず、と今朝からの災難を思い出す。

まず最初はエレベーター。
乗るたびにブーとブザーが鳴り、結局、階段で八階まで上がった。

次にトイレ。
掃除中で使用禁止、仕方なく階下まで階段で駆け下りた。
もう少しで悲惨な状態になるところだった。

そして、今、皿を割った。
本当、嫌な予感がする。