「それにしても、相変わらずのボロ屋だ。物の怪も逃げ出しそうだ」

イエ、ここには物の怪は住んでいませんから。
社長、何気にイケメン顔で、とっても失礼なことを悪びれることなく宣っていますよ。だから、言ってやった!

「それでも、ちゃんと雨風はしのげています」

あれっ、何か間違った? 社長が笑いを堪えている。

フンとそっぽを向くと社長はコホンと咳払いし、厚顔無恥にもフ~ンと鼻を鳴らす。

何だその態度!
ムッとしていると、何故か社長の方が文句を言い出す。

「何度も言っているが、セキュリティが全くなっていない! 防犯上最悪物件だ! 退去期限もすぐそこまで迫っている!」

逆ギレ? と思っていたら……。

「だから、もう越して来い。俺のマンションに」
「だから、何度もお断りしているでしょう」

またこの話だった。ハーッと長嘆息を付く。