「でねっ、十五歳上の元夫はプライドがズタズタになったらしく、結局うまくいかなくなったってわけ」
梨子は黒酢蜂蜜入りホットレモネードをコクリと一口飲み、自嘲気味に笑う。
「何度聞いても喜劇だわ。結局、離婚の根本となる原因は、旦那より貴女の方に文才があったってとこでしょう。小さい男だねぇ、ったく!」
チッと舌打ちし、要子はトマトとバナナのヨーグルトスムージをストローでチューッと飲み、「二日酔いよ、さようなら~」と笑む。
要子の一人百面相を見ながら、私は梨子の話を思い返す。
彼女の元旦那さんは作家で、梨子は彼を真似て物語を書いたらしい。
動機は単純、暇だったから、だそうだ。
それが旦那さんの担当編集者さんの目に留まり、あれよあれよという間に、出版され、ベストセラーになり、各国の言葉に翻訳され、いつの間にか、彼女は世界的な児童文学作家になってしまったらしい。
元旦那さんは、それが悔しかったようだ。
まぁ、分からないでもない。
チョイと書いた作品がヒットし時の人だもの。


