なのに、これから飲むの?
今日は確か……土曜日。二人とも、仕事柄、明日は休みじゃないでしょう?
私もお仕事ですけど……。
「あっ、心配しないで。飲むって言っても、夢子お手製の美容ドリンクだから」
あらら、また表情を読まれてしまったみたいだ。
「そんな大げさなものじゃないのよ。Qグループのシェフに振る舞うなんておこがましいけど、ほら、私、美に関してちょっと煩いでしょう」
いや、かなり、だと思う。
「だからね、食事や飲み物にも気を使っているの」
「で、そのお相伴に与っているってわけ。夢子、私、二日酔い防止ジュースね」
要子は何が可笑しいのかケラケラ笑う。
どうやら、彼女は笑い上戸らしい。
嗚呼、と思い出す。この人、ミイちゃんみたいだ。
ツンと澄ました顔も、ニシャリと笑う顔も、昔、飼っていたペルシャ猫のミイにそっくりだ。あの子もいなくなっちゃったな……。
「梨子ちゃん、すぐ来るって。じゃあ、準備してくるわね」
夢子がいそいそとキッチンに消えてすぐ、またチャイムが鳴り、甲高い声が聞こえた。


