「ほら、その顔。今、自分のこと美しくないって思ったでしょう」
ウッ、殿宮社長にしても彼女にしても、どうして考えていることが分かるのだろう。
「エスパーじゃないからね。貴女が分かり易過ぎるの。本当に正直な人だわ」
今のは褒められたのだろうか?
ホットチョコレートを口に運び、夢子の途切れることのないお叱りと『美』談義に耳を傾けていると、ピーンポーンピンポーン、と連打されるチャイムの音が部屋に鳴り響く。
「また、酔っ払っているのね」
彼女には誰が来たのか分かったようだ。
本当、しょうがないわね、とブツブツ文句を言いながらも、笑みを浮かべ立ち上がると部屋を出て行く。
ガチャッとドアの音がし女性の声が飛び込んでくる。
「夢子~、聞いてよ~」
「ハイハイ」
酔っ払い? 声の調子で来訪者が素面でないことが分かる。
ドアを閉める音と「ほらほら、ちゃんと立つ! はい、コート脱いで」の声。
そして襖が開くと、ビジネススーツを美しく着こなしてはいるものの、夜会巻きが少し崩れた202号室さんが立っていた。


