顔のマッサージを終え、ヘッドマッサージまでしてくれた夢子が殊勝な顔でペコリと頭を下げる。

「強引に誘ってごめんない」

イヤイヤ、もうメチャクチャ気持ちよかったんですけど……。

「いえ、こちらこそ、ありがとうございました。疲れが取れました」

貴女の手はゴッドハンドです! 一家に一人欲しい存在です! とシミジミ思いその手を見つめていると、その手が、また私の手首を掴む。

「お詫びにお茶飲んで行って」と今度は隣の部屋に連れ込まれ、「座っていてね」と言い残し、部屋を出て行く。

「あっ、いえ、遅いので」帰ります、と言おうとしたがピシャリと襖を閉められてしまう。

今さっき、ごめんなさいしたのでは?
舌の根も乾かぬうちに……本当、強引な人だ。

同じ造りなので分かっていたが、こちらは和室で夢子は居間として使っているらしい。もうコタツが設えてあった。

しばらくして、両手にマグカップを持ち夢子は戻って来た。
立ち上る湯気が甘くほろ苦い香りを部屋中に撒き散らす。
それをコタツの上に置く。
よく見るとピンクのウサギ柄だ。ちょっと意外で、フッと笑みが零れる。

「ホットチョコレート、大丈夫?」
「ありがとうございます。頂きます」

ペコリと頭を下げると夢子がフワリと笑う。
本当に綺麗な子だ。

昼間の彼女は、マロン色の髪を縦巻きロールにし、バッチリメイクなのでとても派手に見える。

だが今、目の前の彼女は素顔だ。
でも、昼間以上に美しい。

意志の強そうな大きな瞳、キリッと引き締まった薄い唇、尖がった顎、中性的な知的美人を思わせる。