「姫、流石、シェフだわ!」

億ションと云われる社長のマンションに引っ越したのは新年会シーズンも収まった一月の末。

「それにしても、ペントハウスってやっぱり見晴らしいいわね」

そう、社長と私は婚姻届けを出し、無事夫婦になった。
今日はメープル荘の皆を招待し、引っ越しと入籍のパーティーを開いている。

「それにしても、メープル荘の取り壊しが来月末って何?」

要子の言葉に私は苦笑するしかない。
社長は以前宣言した通り、取り壊しを早めた。本当に呆れてものも言えない。

「まっ、私たちとしてはラッキーだわ」
「そうそう、億ションに破格で入居できるんだから」

要子の言葉に梨子がニシャリと笑う。

「私たちも、こんな素敵な所から新婚生活が送れて嬉しいわ」

ミミと夢子が顔を見合わせチュッとキスをする。
全く、相変わらずの二人だ。

「当然です。こちらの身勝手な予定で皆様にご迷惑をお掛けするのですから」

社長はさも仕事絡みだみたいに言っているが、事実は自己中極まりない。

「それに、貴女たちにはコイツがお世話になりましたからね」

社長が私の肩をグッと抱く。

「結婚式と披露パーティーには是非参加して下さい」
「あらっ、来なくていいって言っても奇襲するつもりだったわ」

夢子がフフと笑みを浮かべる。

「結婚式はセント・リング教会よね」

シスター恵理子の居る教会だ。

「ああ、ごく親しい人だけのね。代わりに披露パーティーは盛大に行う」
「蕩けそうね」

梨子の言葉に社長が当然という顔をする。

「これ以上の幸せはない。愛する女をやっとこの腕にしたんだからな」
「あっ、それ分かります。私も幸せです」

ミミが大きく頷き、夢子の頬にキスをする。

「ところで、梨子ちゃんは入口さんとはどうなったの?」

要子が聞く。

「ああ、彼ね。お付き合いを始めたわ。もうしつこくって!」

顔をしかめながらも唇の端は上がっている。

「それと……」
「あっ、それは俺から言おう」

何故か社長と梨子が目配せし合う。