「社長、誰もが忙しいこの時期に何、無理言っているんですか!」

袋を取り返し肩に担ぎ横を不貞腐れながら歩く社長を睨む。

「私は結婚すると言っているのですよ。いつものようにドーンと構えていて下さい」

おや? 社長でもそんな顔するんですね。
ションボリと悲し気に視線を落とす姿は、叱られた子犬ようだ。

「やっとお前を捕まえたんだぞ、逃げられたらイヤだし、気が変わるかもしれないし」

いじけたようにブツブツ呟く社長は……可愛いかも。妙に母性本能がくすぐられる。

「逃げも心変わりもしません。私には社長しかいません」

ハッキリと言葉にすると自分でも確信する。
そうだ社長は私にとってこの世で唯一無二、愛する人だ。
そして、社長にとっても私が……。

「社長、共に歩いて行きましょう」

社長の手をギュッと握にニッコリ微笑む。

「……俺、今、サンタにプレゼントを貰ったみたいだ」

私のサンタ姿を見つめ、ギュッと握り返す。

「ああ、生涯共に歩いて行こう。姫、愛している」
「私もです。恭吾さん」

社長が目を見開く。

「……今、名前を呼んだな。ウワァァァ!」

社長が心臓を押える。

「お前の突然は破壊的でスゴイ! 今の一撃は強烈だ。お前、俺を早死にさせたいのか」

エッ? どうして、名前を呼んだだけなのに、とオロオロする。

「社長、大丈夫ですか? 救急車呼びますか!」
「違うだろ、恭吾だろ」

ニッと笑うと、隙あり! みたいに口づける。

「後で、もっとたっぷりしてやる。まずは仕事を終わらせないとな。今日はスケジュールが目一杯詰まっている」

目の前の男は、さっきまでの男と同一人物かと思うほど威風堂々としていた。
ポカンとしていると、「行くぞ」と手を引き歩き出す。