「お伽噺ならハッピーエンドは結婚式で終える筈だ。じゃあ、シスター結婚式の準備をして」
「社長!」本気で言っているんですか! と目を見開き慌てて彼の腕を握る。
「あらっ、残念ね。牧師様はクリスマスのミサの準備で恭吾君に構っている暇はないわ」
シスター理恵子の慈悲深い瞳が私を見る。そして、キュートに目配せする。
嗚呼、貴女はマリア様の生まれ変わりでしょうか……思わず十字を切り両手を合わせ「アーメン」と口にする。
「お前、仏教とキリスト教が入り混じっているぞ」
社長が「両手はこう組むんだ」とやって見せ、アッと思い出し「違う!」とシスターを睨む。
「俺たちの結婚を邪魔するんですか!」
「あら、いつだって恭吾君の幸福を願っているわ」
「じゃあ、今すぐ牧師様を呼んできて下さい」
社長、貴方は駄々っ子ですか! 堪忍袋の緒が切れた。
「今日はそんなことをしに来たんじゃないでしょう! いい加減にして下さい!」
ビシッと言い切り、大きな袋を社長から奪い、肩に担ぐと「お仕事に戻ります」とシスターに頭を下げ、社長を置いてその部屋を出る。
全く、子供たちが待っているのに!
「待てよ、俺も行く」
社長の慌てた声が私の背中を追って来る。


