「お前、今何を言った?」
社長は振り返ると目を点にして私を見る。
「……何を言ったのでしょう?」
思わず力が漲り口を突いて出た言葉……『結婚』
これが私の本心?
「結婚しましょう、と言った。確かにな」
聞こえていたんじゃありませんか!
「ウワッ! 社長、今の無しでお願いします」
「イヤ、カウントゼロにはできない」
「そこを何とか」
「できない!」
キッパリ言い切り、肩に担いだ大きく白い袋を床に置くと、私をギュッと抱き締める。
「やっと崩落させた!」
子供のような喜びように胸が物凄い速さで動き出す。
「そうだ、丁度いい。ここは教会だ。今すぐここで結婚しよう!」
嬉々と笑みを浮かべると、もう一度袋を持ち、私の手を握ると奥へと歩き出す。
「しゃ社長! お気を確かに! お願いです。正気を取り戻して下さい」
私の言葉は蚊帳の外に置き去りにされたようだ。


