ランボルギーニが古びた教会前に到着する。
去年訪問した教会とは違う。
「……この教会」
車を降りると辺りを見回す。
大きな袋を担いだ社長サンタの後に続き足を進め、教会の中に入る。
「アッ」天使のステンドグラス。
やはりこの教会は社長と初めて出会った教会だ。
「覚えているのか?」
「はい。このステンドグラスは忘れられません」
「ああ、誰だったか忘れたが、これはフランスの著名なガラス芸術家の作らしい」
上を見ながら歩いていると、オットと躓く。
「ほら」社長が手を差し出す。
「いいですよ、子供じゃないし」
照れる私に、「いいから」と社長は私の手を強引に取ると歩き出す。
繋がれた手を見つめながらお千代さんを思い出す。
お千代さんはいつも何処へ行くにも手を繋いでくれた。
その手があるから私はいつも安心して前へ進めた。
そうか、私が立ち止まってしまったのは……その手が無くなったからだ。
そして今、私の手を繋ぐのは社長。
変わらない温もりに胸の奥が温かくなり、力が湧いてくる。
「社長……結婚しましょう!」
社長の足がピタリと止まる。


