痛快! 病ンデレラの逆襲


十二月二十一日。朝からFクラスは大賑わいだ。
そして、いつもと違うのは全員コック姿ではなくサンタの格好だ。

「事前に申し送っていた通り三班に分かれ、午前に三つ、午後に九つの病院、施設を回る。常に連絡が取れるようにしておいてくれ。じゃあ、作業を始めてくれ」

主任がパンと手を叩くと全員が動き出す。

「殿、サンタさんの格好が良くお似合いね。私、本当はミニスカサンタがよかったのに」

これじゃあね、と真梨香様はキツキツの赤いズボンを引っ張る。
社長はどうやら真梨香様のミニスカサンタを想像したらしい。
ブルブルと頭を振ると、それは絶対却下、と両手で大きくバツを作る。

「真梨香様、未来ある少年少女の夢あるクリスマスを歪めるつもりですか!」

社長、それは言い過ぎです。
でも、私の頭にも赤色網タイツ姿の真梨香様が浮かび、一理あると同意する。

横で聞いていた主任が笑いを噛み締め真梨香様の肩をポンと叩く。

「まぁ、トナカイの着ぐるみを着せられなかっただけマシだと思え」
「まさか私に着ぐるみを着せるつもりだったの! 最低!」

主任と真梨香様はギャァギャァ言いながら出掛ける準備を始める。

「あれじゃあ、伝わらないな」

社長がポツリと呟く。

「何が伝わらないのですか?」

「エッ、気付いていなかったのか? 主任が真梨香様に好意を寄せているのを。皆知っているぞ」

エェェェ! 今年最後の最大の驚きかもしれない。
主任って、社長ほどではないが結構なイケメンで、社長ほどではないが結構モテる。

「それって、真梨香様は気付いているのですか?」

「さあな、あの調子じゃ気付いていないんじゃないか。真梨香様って他人のことには鋭いのにな」

そうか、真梨香様の幸せもすぐ側まできているんだ。
胸の辺りで拳を握り、主任、ガンバ! と幸運を祈る。