今回の何チャラパーティーはあの富豪中の富豪、榊原氏のパーティなだけに、メンバーの殆どが気合を入れている。
何故なら、万が一にも『世界の榊原』と謳われる彼のお抱えシェフになれたら、最高ランクのステータスになるからだ。
殿宮社長は引き抜きにとても寛容だ。快く送り出してくれる。
が、実のところそれが狙いのようだ。
後々のため顧客に恩を売っておこう、という算段らしい。
後々のために、が何かは知らないが、本当、抜け目のない社長だ。
ちなみに、入社間もない頃、私も甘いお誘いを受けたことがある。
かなりの好条件に、思わず退職届まで書いてしまったほどだ。
だが、「あれは断っておいてやった。あそこは評判が悪い」と社長は勝手なことを宣わった挙句、せっかく書いた退職届を目の前でビリビリに破り、紙吹雪のように散らした。
全く! あの後、掃除が大変だったんだから。
流石の私も、あれには怒り心頭となった。
本当、何を考えてんだかだ!
今思えば、あの後からだ……社長の車で行き来するようになったのは。


